眼科のまめ知識
目の外傷
眼球はとても小さな器官ですが、物を見るうえで欠かせないいくつもの組織が組み込まれています。それらのなかには、いったん損傷すると再生しなかったり、再生しても元のようには働かない組織もあります。例えば、皮膚をけがした場合は、たとえ傷あとが残るとしても、機能的な問題はなく治ることが多いですが、目に限っては、一つのトラブルが多大な影響を及ぼすことが少なくありません。
■自覚症状が軽くても必ず診察を受ける
眼外傷の治療で大切なことは、ケガの後に可能な限り早く正しい応急手当てを施すことです。手当てを開始するまでの1分1秒の差が、視機能を大きく左右することも珍しくありません。症状が軽いからといって診察を受けずに放置していると、治療のタイミングを逃して、取り返しのつかないことになりかねません。片方の目に異常があっても、ふだんは両目で物を見ているので、視力低下や視野の異常に気付かないことがあります。ですから自覚症状は、片目をふさいで必ず左右別々にチェックしてください。
眼外傷ではまず、損傷した組織を修復したり、入り込んだ異物を取り出す緊急治療をします。傷のある場合には同時に抗生物質などを十分に使って、細菌やウイルスに感染しないよう厳重に注意します。重度の外傷の場合、まずこのような救急治療を行い、しばらく経過し状態が安定してから、もう一度手術を行って組織をきちんと修復し、視機能の回復を図る場合も多くあります。
■目のけがの応急手当て
目をけがした場合の一般的な対処法をお話しします。
なお、症状が目以外にも及ぶような場合には、ここに示す内容にとらわれず、すぐに救急外来を受診するか救急車を呼んでください。
◎液体や粉末状のものが目に入ったとき
《洗剤、漂白剤、カビとり剤、接着剤、ヘアカラー、石灰、セメント、薬品など》
(1) 直ちに水で十分に洗眼する
なによりもすぐに目を洗うことです。最低10分以上、蛇口の水やヤカンに汲んだ水を目に直接かけるか、洗面器に張った水で目をよく洗ってください。目をつぶっていては効果がないので、痛くてもがまんして目をあけて洗眼してください。 この間、目をこすってはいけません。
(2) 近くの眼科医に連絡をとる
洗眼の開始とともに、周囲の人が(1人の場合は自分で)近くの眼科に電話をして状況を説明し、指示を受けてください。
(3) 眼科を受診
洗眼が済んだらすぐに、連絡をとった眼科医や眼科救急外来を受診してください。
◎固形物が目に入った・目を切ったり刺したとき
《なにかの作業中に鉄片、木片、プラスチック片が飛んできて目に入った。カッターで目を傷つけた。針が目に刺さったなど》
(1) 付着物を水で洗い流す
目の表面や周囲によごれがついている場合は、すぐに水でそれを洗い落とします。また、眼球に大きな傷がある場合は無理に目を開かずに、軽くよごれをとってください。 この間、目を押さえつけてはいけません。出血している場合は、きれいなタオルやティッシュなどをまぶたの上から軽く当ててください。
付着物がない場合はすぐに (2) へ。
(2) 眼科医に連絡をとって受診する
近くの眼科に電話をして状況を説明してください。応急処置の指示を受け、それが済んだら直ちに受診してください 。
◎眼球や目の回りを打撲したとき
《球技のボールが目に当たった、格闘技中の事故など》
●視力低下や視野の異常、眼痛などの自覚症状がある→眼科救急外来を受診
●これといった自覚症状はない→念のため眼科を受診し精密検査を受ける
◎理由は思い当たらないが目が痛いとき
●視力低下や視野の異常、または頭痛や吐き気などを伴う→直ちに眼科を受診
●眼痛以外の症状はない→眼科を受診る
■今回のアドバイス
一刻を争う状況のなかで正確な診断・的確な治療を素早く行うためには、以下のような事項を正確に医師に伝えることがポイントです。
●できるだけ詳しい受傷時の状況
・目に物が入った場合、なにがどの程度入ったのか
・打撲の場合は当たった物(ボールであればその種類〈野球ボールかサッカーボールかなど〉、固さ、飛んできた方角・スピード)、当たった瞬間の姿勢
・格闘技の場合は相手のどの部分が、どのような動きのなかで、どこにあたったのか
●何分前に受傷したのか
●メガネやコンタクトレンズをしていたか
●どのような応急手当てをしたか
● 目に洗剤や薬品などが入った場合は、それがなにかわかるもの(容器や説明書)を持参してください。固形物の場合、破片が残っていれば、それを持参してください 。
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