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| 黄斑円孔 |
2007/11/27 |
網膜の中心にあるくぼみで、光受容体が密に集まっている、視力が一番いい部分を中心窩と言います。その中心窩の網膜に穴があいてしまう病気が黄斑円孔です。穴自体は直径1ミリに満たない小さなものですが、最も視力が鋭敏な部分にできるため、大きな影響が現れ、視力は0.1前後(近視などは矯正した状態で。以下同様)になってしまいます。高齢者、とくに近視の人に多く、60代をピークに、その前後の年齢層の人に多発します。とくに、硝子体の液化が進みやすい近視の人や女性に多い傾向があります。
■円孔のでき方と症状
なぜ、よりによって一番大事な中心窩に穴があくのでしょう。以前はその理由がよくわかりませんでしたが、検査機器が発達したことで、円孔ができるメカニズムが詳しくわかってきました。
【段階1】
加齢によって硝子体が収縮するときに、硝子体の皮質と網膜の癒着が強すぎると後部硝子体剥離が起こらず、網膜が硝子体皮質に牽引されます。これにより、本来は少し凹んでいるはずの中心窩の網膜が、平坦になったり前方に浮き上がったりします。
浮き上がった網膜の内部には、袋のような空洞=嚢胞(のうほう〉が形成されます。この状態では視力はまだ0.5程度はあり、ふだんは両眼で見ているので気付かないこともあります。
【段階2】
網膜がさらに牽引され、嚢胞の縁の一部が破れて弁のようになって、剥がれかかる状態です。視力が低下し、物が歪んで見えたりもします。
【段階3】
弁のようになっていた嚢胞上部の網膜が蓋となって完全に分離し、円孔が完成したばかりの状態です。この状態では中心暗点といって、視野の真ん中だけが見えなくなります。物がつぶれて見える、テレビを見ると人の顔だけが見えない、などがよく聞かれる訴えです。
【段階4】
段階3から数カ月〜数年たつと、硝子体はさらに収縮します。分離した蓋は硝子体皮質に付着したまま眼球内の前方に移動してしまっています。
■黄斑円孔の治療
黄斑円孔は、少し前までは治療法がありませんでした。しかし今では手術によって、視力を取り戻せるようになっています。
まず後部の硝子体を切除します。(硝子体はそれほど重要な役目がある組織ではないので、切除しても視覚に直接的な影響はありません。)
次に、眼球内部にガスを注入します。手術は基本的には、これで終りです。
術後は円孔周囲の網膜がガスで抑えつけられている間、円孔が小さくなっています。すると、円孔中心に残っているわずかな隙間にグリア細胞という、周囲の細胞をつなぎ合わせる働きをする細胞が現れ、円孔を完全に塞いでくれます。
■段階による手術の適応と術後の視力
【段階2】〜【段階4】の患者さんに、手術が行われます。【段階1】では、硝子体皮質と網膜が自然に剥がれて治ってしまう可能性もあるので、しばらく様子をみます。また、【段階4】の状態で何年も経過しているようなケースも、手術の効果が不確かなことや、患者さん自身それほど不自由を訴えないことが多いので、積極的に手術をしないケースもあります。
手術により、0.1だった視力が10日ほどで0.3程度になります。そのあとは中心窩の組織が修復されるとともに、ゆっくりと回復していきます。1回の手術で8〜9割の人は、不自由なく暮せるレベルの視力に戻ります。
■今回のアドバイス
いったん治ったあとに、最初の円孔とは別のメカニズムで再び同じような円孔ができる人が、5パーセントぐらいいます。しかし医学の進歩はめざましく(黄斑円孔が治せるようになったのは、最近の話です。)ほとんど再発しなくなりました。
患者さんの約1割は、他眼(健康なほうの眼)にも発病しますが、すでに後部硝子体剥離が起きていれば、網膜が牽引される原因がないので、発病の確率はずっと低くなります。
また手術の合併症で一番多いのは白内障です。60歳以上の患者さんなら1年以内に100パーセント近く起こります。このため多くの場合、黄斑円孔の手術と同時に白内障の手術もしてしまいます。
なお、 手術の合併症として注意が必要なのは、網膜裂孔と網膜剥離です。術後数カ月から約1年の間に約5パーセントの人に起こります。視野が欠けたり視力が著しく低下する原因となる、治療の緊急性が高い病気ですから術後はなるべくこまめに検査を受けるとともに、見え方の変化に気をつけて、異常を感じたらすぐに受診してください。
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